寄せて、集めて

なんとなく記す

長い文には巻かれろ

ランチタイム、ひと息つき
向かいのお店横のお気に入りの自販機に
缶コーヒーを買いに訪うたところ、
その自販機の前にチャリンコが一台

『自販機の前にチャリンコ止めるかね〜、しかし』

と、悲憤する気持ちを抑え
思い切ってどかそうとも考えたが、
いかんせん必要以上に重ったい電チャリなうえに
14人前の調理と洗い物を平らげた直後で
右腕のミギーがピクピクしていたので断念

もしそのままの状態で
人類が自販機で缶コーヒーを買うには
決してあり得ないイカれた態勢で買おうとしたならば
きっと店の中の豊満ご婦人に見られ、

『あのエプロン姿にドンペンサンダルの殿方、チャリンコを拉致ろうとしてるわよ!』

などと妄想を張り巡らされ
冤罪で御用となりクサい飯を喰らう事になっても困るので、
諦めて少し離れた自販機へ

『汝、あのチャリの飼い主を恨むことなかれ、
コレには運命めいた何かがあるに違いない』

とご自分に言い聞かせ、
今ではすっかり珍百景となった
少しお高めの当たり付きの自販機の前に立った

普段は買うことのない銘柄の缶コーヒーの
ボタンをポチッとし、
『ピピピピピピピピピピ』という
きっと夜中に買うには忍びないくらい
音量調整を間違えているであろう
デジタルスロットに目をやる

三桁の数字が、大井競馬場にて
馬と競争したときの井手らっきょ並みに
目まぐるしいスピードで動いていた

暫くすると向かって左側から順に数字が止まる
.

『 7    7    ・・・ 1 』

.
・・・いや、1て!

遠い!

しかも一瞬7に見えて紛らわしい!

.
釣り銭を取り忘れている事にも気づかない程の
放心状態の私は
帰り際、脳内に悪いカツオ(磯野)が現れ
例のチャリンコのサドルを
特大黒ごま豆腐にすり替えてやろうなどと画策したが
スロットにうつつを抜かしているあいだに
そこにその姿はすでに無し

.
『まあ、コレもまた我が運命』

と、
このほんの数分の間に
恐らく300gほど痩せたであろう私は
馴染みのない味の缶コーヒーを飲み終え
三蔵法師一行と共に
天竺へと向かったのでありました・・・

つづく